(出典;www.homes.co.jp)
紹介してくれたのは、放送作家の岩崎夏海さん。
あの『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(通称”もしドラ”)で有名ですね。
林先生は世界文学と言えば”フランス”のイメージが強く、岩崎さんが”アメリカ文学”を選んだことが意外だったようです。
『ハックルベリー・フィンの冒険』てどんな本??
マーク・トウェイ著。アメリカ文学の大偉人です。
”トムソーヤの冒険”の続編で、アメリカ文学の金字塔と言われています。
南北戦争付近のアメリカを舞台に、娯楽性だけでなく「奴隷制度にも見られる人種差別問題」を痛烈かつ辛辣に描き出した感動長編です。
白人少年”ハック”と黒人少年”ジム”が自由を求めて旅をする、冒険の行く末は…。
(番組で紹介された本は新潮文庫のこれ↓↓)
『ハックルベリー・フィンの冒険』を読むポイント
トムソーヤの冒険との違いを知っておこう
”トムソーヤ”は筆者の少年時代を反映して描いた小説。(ハックも登場している)
異常なヒットを記録し、マーク・トウェイは大金持ちになりました。
しかし自分が思ったように文章が理解されないことに悩みます。
大人を対象とした文学を書いたつもりだったのに、子ども文学として扱われることは自分の思惑とは違っていた。
そこで続編を描くことにしたのです。
三人称から一人称への変化
著者は”トムソーヤ”の反省として、小説としての踏み込みが甘いこと、3人称(神の視点)で書いたことを反省します。やはり文学とは一人称で描かれなければならない、と。
故に後編では小説らしい小説を書くために、ハック少年の視点という”一人称”の文体で描かれています。
この一人称形式の文体で描かれた小説は
後のアメリカの文学に決定的な影響を及ぼす
ことになります。
アメリカを代表する多くの作家が多大な影響を受け、あの有名なヘミングウェイは「あらゆる現代アメリカ文学は、マーク・トウェインの『ハックルベリー・フィン』と呼ばれる一冊に由来する」と述べています。
今でも年間10万部売れているそうで、なんとも脅威的な小説ですね。
最大の魅力は、差別の本質を捉えていること。
岩崎夏海が選ぶ、最も感銘を受けた一節
それは
『よし、それじゃあ僕は地獄へ行こう』
という有名な言葉です。
この言葉が「差別の本質」を表す決定的な言葉になっているのですが、読まないとわからない部分でもあるので、気になる人は本でご確認下さい。ネタバレになるので細かいストーリーも省きます。
ここでは岩崎夏海さんが本から読み解いた「差別の本質」を解説していきます。
差別の本質とは?
この本が刊行された当時、白人と黒人が手を取り合うのは考えにくい状況で(今よりもずっと酷かった)、この小説は人々にとって非常に刺激的な内容でした。
”差別はダメ”とハッキリ書いているのです。
しかも”差別はNO”ということを突きつけると同時に、”差別は人間の本質”ということも描かれています。
差別は人間なら誰でもしてしまうこと。自分の中にある差別心を見つめて深く反省すること、その重要性を伝えるメッセージが文章に隠されている、と岩崎さん。
理想主義的な立場から「差別ダメ」と言うのではなく、一人ひとりが差別者という「自覚」を持つことがほんとうの意味での差別問題解決への近道ではないか、ということですかね(という林修のまとめの言葉がありました。)
もっと深い理解をするためのヒント!
この辺も小説を読まないとわけが分からないかもしれませんが、物語の魅力を底上げしている需要な部分でもあると思ったので掲載します。
本作におけるトムソーヤの位置づけ
この小説において、最も読者からの批判にさらされている存在が「トム」です。
トムソーヤは物語の最初に出てきて、そのあと物語から離れていきます。
そしてずーっと出てこない、と思ったら最後にまた登場する。
これが「いらない演出じゃないか」という意見が多いのだそう。
岩崎さんはここに読者の勘違いがあると言います。
騙されている、あのヘミングウェイも勘違いしている、と。
(ヘミングウェイもこの部分に関しては批判をしています)
トムソーヤは無理解の象徴?
本作において黒人「トム」は「理解されない人間の象徴」として描かれており、筆者は理解されない自分をトムに投影させている、と岩崎さんは言います。
つまり物語に出てくる時間が少なくても、筆者が思いを込めた「隠れた重要人物」ということです。
また、ハックだけはトムのことを理解しているのでは?と思わせる描写がいくつか出てきます。ゆえに白人ハックはトムを信用し、従うようになっていくのです。
それはトムが銃で打たれるシーンの『それはトムが定めた順序によるものであった』という一文から読み取れます。(ハックがトムを信頼している現れだ、ということです)
林修曰く「この文章はストーリー上要らない一文であり、一流作家が余計な一言を付け加える時は”重要な意味”を持っている」
なんだか分かる気がしますね。
まとめ~アメリカ文学は仕掛けがいっぱい~
岩崎さんも仰っていましたが「分かるやつだけ分かればいい」というような仕掛けがたくさん隠されています。
そこに気がついて読めば一層理解が深まり、この小説の本質に近づけそうです。
さすが、アメリカ文学の出発点。
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