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夏目漱石『こころ』姜尚中が語る魅力~林修・世界の名著~

 2015/08/29  

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(出典:jbpress.ismedia.jp)

ゲストは東京大学名誉教授・姜尚中(カン・サンジュン)さん

”悩む”ということを考えるきっかけとなった作品が、夏目漱石の「こころ」だったのだそうです。

(番組で使われた本はこれでした。)

ネタバレを避けるため、本文に関する林先生と姜尚中さんの考察は割愛します。
ここでは楽しみ方、本の魅力についての話をまとめています。

漱石の時代と現代は似ている

「こころ」が執筆されたのは、日露戦争が終わって日本が下降していく時代。(明治の終わり、恐慌などもあった)
姜尚中さん曰く、この時代は今で言うリーマン・ショックの後と似ているとのこと。

現代の若者が高度経済成長を終え、どのような生き方をするか悩んでいるように、「こころ」は漱石が新しい時代の生き方を模索した作品ではないか、ということ。

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(出典:rennai-meigen.com)

姜尚中が選んだ一節

「自由と孤独と己れとに充ちた現代に生きた我々は、その犠牲としてみんなこの淋しみを味わわなくてはならないでしょう。」

「自由と孤独と己れ」は戦後民主主義(現代)そのものではないか、という姜さん。
戦後民主主義を実現した社会は淋しい社会であり、近代的孤独を生み出します。

漱石の時代にも、自分たちは世の中に飼われているだけなのだ、という若者の意識があった。

日露戦争の後の日本は、個性・自由・独立独歩が良しとされる時代だったし、そう教えられて育ったそうです。しかし、それは必ずしもハッピーになれるものではなかった。
人と人との関係性がなんでこんなに淋しく、どこかで空虚なんだろう。そんなことを感じる時代だったのですね。

エピゴーネンを生み出す時代

姜尚中さんは、この時代の思想の背景として、エピゴーネン(芸術や思想の分野において完成品を追随するだけの模倣者。亜流)の問題を挙げられました。

現代においてもエピゴーネンが様々な分野で問題視されますが(オリンピックロゴ問題とか音楽の飽和状態とか…)、漱石の時代もそうだったそう。

思想や表現が飽和している中で、個性や自由を求められ、その中で生きる人々の「自分とは何なのだろう」という”こころ”、迷いが現代とすごく類似しています。

自分の成長を確かめられる名著

「こころ」は読む年齢によって、心に残る文章が変わるそう。
歳を重ねると、分かってなかったことが分かる、そしてまた数年後に読む、の繰り返し。
そこも大きな魅力の一つなのだそうです。

姜尚中さん曰く、「10年後に読んで同じように感じるのであればその人は進歩していないのでは(笑)」とのこと。

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まとめ

漱石の代表作「こころ」は、時代背景も思想も、戦後民主主義に共通する部分が大きい作品。

人間(特に現代人)が自分の生き方や心の問題を考えるきっかけを与えてくれる、後世にも残すべき偉大な作品と言えると思います。

姜尚中の書籍

番組で話したことを、詳しく記したような内容を含む1冊。

【全放送の一覧はこちら】
「林修・世界の名著」本・ゲスト、全放送まとめ