BS-TBS林修・世界の名著。
今回のゲストは作家・クリエイターの「いとうせいこう」さん。
選んだ名著は「供述によるとペレイラは…」。
イタリアの作家「アントニオ・タブッキ」が1994年に発表した作品です。
(出典:beagle-voyage.com)
いとうさん、ということで「生きかた」に関する面白い話が飛び出さないかな?
と思っていましたが、かなり真面目にどんな物語かを語っており、本の内容を話すようなネタバレ的な内容。ただ、紹介された本は他の人が選ばないような非常に魅力的なものでした。
ということで今回は簡単に本の魅力をまとめた内容となっています。
「供述によるとペレイラは…」の概要
舞台は第2次世界大戦目前、ファシズムが台頭する1938年のポルトガルを舞台に、主人公のペレイラが自身の生きかたを問い直そうとする家庭を供述という切り口で描き出した普及の名著である。
なぜ読まれにくいイタリア小説を選んだのか?
林先生なら絶対に選ばない、野球で言うなら「知らない球種を投げられたバッター」のようなタイプの小説をなぜ選んだのでしょうか?
いとう:長嶋さんを見ているうちに「あれ?原もいるな。中畑もいるな。」みたいな感じで見えてきたんです。
林修:ここまで知らない球種を投げられると快感ですね。今日は先生に教えてもらうつもりです。
「供述によるとペレイラは…」の魅力
主人公の供述を綴る作品
まずは簡単な物語の流れをご紹介。
主人公のペレイラは新聞社の文芸面を担当していた。政治的な主張は持っていなかったのだが、記者志望の青年や、静養先で出会った海洋治療専門医に出会う中で徐々に自身の中に秘められていた反体制の思想が次第に顔を覗かせる。
そしてある事件をきっかけに自らの思想を行動に移した結果、ペレイラは体制側に逮捕を余儀なくされる。この作品はその彼の供述という形で綴られていく。
冒頭から「供述によるとペレイラは~と言った」という言葉を繰り返すこの作品は、事件が既に起こった状態を前提とし、後から回想していく「刑事コロンボ」のような進み方をする。
いとう:「この人は逮捕されているな」と冒頭から予想ができ、その上で過程を順を追って記述していくというスタイルの文学作品なので、非常に読みやすいですよね。
主人公の魅力に惹かれていくように描かれている
物語の序盤において主人公は事件を起こすような突飛な人物ではなく、むしろ太っていたり新聞社とは言っても大した好奇心もない、”うだつのあがらない”人物として描かれる。
いとう:ペレイラの変化していく様子を読み進めるうちに、だんだん好きになってくようにできているんですよね。
アントニオ・タブッキが伝えたかったこと
物語を通して自分の人生を問うような作品になっているが、なぜ主人公が逮捕されるまでになったのか、主人公の行動の理由は何なのか、明確には示されていません。
それ故にたくさん貼ってある伏線に対して様々な見解が可能であり、深く考えさせられる作品となっています。
いとう:タブッキは人間の持っている「良心」とは何かを考え、同時に信じていたのではないか。本に書かれてはいないけど、主人公にもまた良心のようなものを重ねていたんじゃないかと思います。
読んだ後に知ると面白い、2人が好きな登場人物
いとうせいこう「マヌエル」
マヌエルは給仕。
いとう:ドラマで言うなら小日向文世さん的な、良い役どころ。こういう人がいると読み進めるのが楽ですよね。安心もする。
林修「カルドーソ医師」
主人公が静養先で出会った海洋治療専門医。精神的な面でペレイラに大きな影響を与える人物でもあります。
いとうせいこうさんが記した本を表すひと言。
良心
林修:タブッキが1990年台に記したことです。しかし我々が今問い直さなければいけないのもまたこの「良心」についてなのかもしれないですね。
↓番組使用はこれ。
番組で紹介された、いとうせいこうさんの書籍。
AMAZONの書籍内容を転載します。
アメリカ、ペルー、マレーシア、日本、香港、クロアチア……。世界のさまざまな場所から『存在しない小説』というウェブサイトに届いた小説は、それぞれ見知らぬ土地の風土が匂い立つような文体で、そこに生きる人々のドラマを鮮やかに描き出していく。「存在しない作家」たちによる、魅力あふれる世界文学。
簡単に言えば短い小説と考察。だけどそんなに軽いものでもありません。いとうせいこう的な思考や文章が好きな人は楽しめる一冊。