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奇才『夢野久作』がアメトーーク!で光浦オススメ書籍に。精神に異常をきたす、強烈な世界観。

 2015/08/06  

yumeno(出典:matome.naver.jp)
アメトーーク!で光浦靖子さんオススメ書籍のなかに、故・夢野久作さんを発見しました。ニッチなもの出してきますね。

個性と世界観が強烈で、これまで読んだ小説の中ではずば抜けていると思うんですが、全く触れられてませんでした(笑)

すっごく好きなんですけどね。こっそり「お、気が合うじゃん!」と1人勝手に喜んだだけでは寂しいので、ちょっとご紹介。

夢野久作について

福岡県出身、1889生まれ、1936年没。明治から、大正、昭和初期の小説家。

日本三大奇書の一つ『ドグラ・マグラ』の著者

日本の推理・探偵小説の中には「奇書」と呼ばれる三大作品があり、その一つを書いたのが夢野久作です。

残りの2つは小栗虫太郎の『黒死館殺人事件』、中井英夫『虚無への供物』(それぞれ、”こくしかん”、”きょむへのくもつ”と読みます)

本来『奇書』という言葉は”優秀な・優れた書物”という意味の中国語ですが、日本では”奇抜な・幻惑的な”という意味で用いられているそうです。(Wikipediaより)

夢野久作の魅力とは?

奇怪的で幻想的強烈な個性と雰囲気に圧倒されます。時代背景や設定だけ見ると古いですが、その斬新さ故に全く古さを感じさせない作品ばかりす。

文章・物語を読んでいるというよりも、アートの世界を見せられているようで、おかしな夢の中を覗いているような、それでいてリアルさを感じるような、不思議な世界へと引きずり込まれます。

推理・探偵・ホラーなどの括りには収まりきらない、圧倒的な世界観です。

その世界はストーリー云々とか、言いたいこと云々とか、そんなことどうでもいい!と思えてくるほど。本のレビューだって、まともに書けている人を見たことありません。読まなければ解らない世界です。

文庫本がいいでしょ?

古い作品なので電子書籍だと無料で読めますが、縦書の印刷文字で読むと奇怪的な迫力がより一層増すと思います。ストーリーもさる事ながら、雰囲気を楽しみたい作品ばかりです。私も電子書籍はたまに利用しますが、やっぱり堅い印象を与えてしまいがちです。生々しさを大切にしたい作品は、断然文庫本でしょう。

夢野久作のオススメ本

1位『ドグラ・マグラ』脱落者が続出

ドグラ・マグラ (上) (角川文庫)
「読破したものは、必ず一度は精神に以上をきたす」と言われる、夢野久作・長編小説の代表作。

著者自らが「これを書くために生きてきた」と言い、十余年の歳月をかけて完成された、集大成とも言える一冊。その内容はあまりに難解で、最後まで読めない人がたくさんいる本です。

簡単ストーリー

精神病棟の隔離部屋で目を覚ました主人公は記憶喪失のようだった。そこへ現れた1人の博士。彼は主人公が「精神異常を利用した犯罪に巻き込まれたのだ」と言う。博士に連れられ、記憶を取り戻すためにさまざまな資料を読むのだが、次第に混乱していき…。

ちょっと、ストーリー書くのが難しいですね(笑)
一言で言うと

錯乱の無限ループです。

文章の形式を知っておこう

文章の半分近くに「書簡体形式」(書簡=手紙)が使われていて、本文と書簡の部分が行ったり来たりする構成。これがドグラ・マグラの世界観をより一層引き立てます。

書簡の内容の一つ一つも大変魅力的で、その内容に引きずり込まれます。それぞれの世界を行き来しながら読んでいるうちに、読者までも主人公のような錯乱状態に…。

何度も挑戦する価値がある

何度も何度も読むと面白さが増していく本です。私が初めて読んだのは学生の時でしたが、最初は訳が分からず、何度もページを戻しながら読みました。全体を通しては2回読破。一度目で何となくの流れを掴んで、二度目に読んだとき、その世界観に脱帽しました。

ポイントは難しい文章が読めるか否かではなく、夢野久作の世界に引っ張られた時、素直についていけるかどうか、だと思います。出来るだけ先入観を持たず、頭を空っぽにして読む方が良いでしょう。


ドグラ・マグラ (下) (角川文庫)

2位『瓶詰の地獄』

傑作「瓶詰の地獄」を含む短篇集。初めて読むならまずはこれ。これも書簡体形式です。
瓶詰の地獄 (角川文庫)
【簡単ストーリー】海で遭難し、小島に流れ着いた2人の兄妹。彼らが生きる島がどれだけの地獄であったか…

”瓶詰”は夢野久作の1、2位を争う傑作だと思います。独特の雰囲気で描かれる狂気・暗さ・圧迫感を堪能して下さい。ドグラマグラは長くて読破できなくても、これなら一応最後まで読めるはず。

3位『地獄少女』

『地獄少女』『女坑主』『童貞』の3作品を収めた傑作集。主人公の女が魅力的すぎる。
少女地獄 (角川文庫)
【簡単ストーリー】華麗な美少女の看護師が主人公。すべての人間に好意を抱かせるほどの天才的でありながら、その実態は病的な虚言癖によるものであった。嘘に嘘を重ね、巨大に増幅された嘘の果てとは…

こちらも、長さ的に読みやすい…かな?

光浦靖子のオススメは『夢野久作全集』

先ほど取り上げた傑作『瓶詰の地獄』を含めた傑作集。

夢野久作は難しいのか?

古くて難しいと言われると、何となく手を出しずらい…という人も居ると思います。でも、夢野久作の本が読めない人が多いのは、難しいからというのは半分違うような気がするんですよね。

なぜなら、難しい本が得意じゃない私が読めているからです。

夢野久作を読むポイント

世界観を合わせられるかどうか、ではないかと私は思います。

”訳わかんない”と思って読むのをやめるか、夢野久作の世界を受け入れて自分の中に取り入れるのか

かと言って、万人にオススメできるような本だとは思わないですし、興味のない人に薦める気もありません。でももし、たまたま興味を持って読んでみようと思ったのなら、自分の読む角度を少し変えて挑戦してみたら楽しいかも。

多くの人が脱落する本、読めたらきっと新しい世界を見つけられると思います。
暗くて、じっとりとした世界ですが(笑)

養老孟司

最後に、養老孟司が本書について言っていた言葉をご紹介。

脳髄という言葉は、現在の感覚では、ただ脳と表現するより、たしかに無気味な迫力がある。だから、この小説ではまさしく「脳髄」でなくては不可なのだが。

養老孟司『ドグラ・マグラ』の科学(『ユリイカ』1989年1月号)(NEVERまとめ)

では、良い読書の時間を。