みなさんは、小学校の先生が全教科教えていることを疑問に思いませんか?
先生たちのほとんどは高校・大学へと進学し、そこで専門教科(数学、文学など)を軸に学んできた人たちばかりです。それなのに、全教科教えているという不思議。
人に何かを教えるというのは、簡単なことではありません。1つ教えるだけでも大変なのに、1日中複数の教科を教えなければならない。先生たちは大変な苦労だと思いますし、もう苦労をすることを諦めている人も多いかもしれません。
私が教育実習に行ったのは10年前のことでしたが、その時もやはり全教科教えることによる問題を感じざるを得ない状態でした。
そこから10年経って、今も変わらない小学校教育。
その問題について、書きたいと思います。
小学校の担任にだって専門はある
私が実習で担当したクラスは小学校6年生でした。担任の専門は体育。
私は専門が物理。理科の授業をメインに受け持つことになります。
実習初日、クラスの女の子グループがこんなことを言っていました。
「ねー、先生は何で理科の先生なのー?理科はねー、あんまり面白くなーい。体育だったら良かったのにー。うちのクラスは体育が得意でねー、○○先生(担任)は体育が得意な先生だから、みんな体育に気合い入ってるんだよー」
子どもは正直ですね。理科はやりたくない、と悪びれもなく甘えた顔で言うんです。
クラスの全体目標のように、体育頑張ろぜ!!という雰囲気が悶々と出ていました。
それ自体は悪いことだとは思いませんが、何か考え方がすごく偏っているような、変な感じがしたんです。
それは他のクラスも一緒で、隣のクラスは音楽が好きなクラス。毎日歌声が聞こえてきました。
理科が好きな男の子「博士」
ある日、比較的目立たない子が集まる班で給食を一緒に食べた時のことです。
「ねー、みんなも理科嫌いなの?」と聞いてみました。
すると、ある男の子が「そんなことないけど、あんまり楽しくはないかなー。でも、コイツは理科めっちゃ好きで、図鑑とか持ってて博士って呼ばれてんだよなー?」と。
その”博士”は「いいから!」と声を抑え気味に言いました。照れというよりは、”余計なこと言いやがって”という雰囲気でした。「へー、先生は理科面白いから大好きだよー、色んな事知ると楽しいよね?」って聞いたら、ちょっとだけ博士はうなずいていました。
博士はクラスで肩身の狭い想いをしているように感じられました。
楽しみ方を知らなかった子どもたち
細かい話は省きますが、実習中はとにかく「理科や数学も楽しいよ」ということを知ってもらうことに専念し、実験や実生活との関わりを重視した授業内容にしました。
数回の授業で生徒たちはとても楽しそうに話を聞いてくれました。
たくさん挙手をして質問もしてくれました。
授業が終わると、最初に「理科つまんない」と言っていた女子グループも「理科の授業だけずっと先生やってよー」と嬉しい言葉をくれたことを覚えています。
子どもたちは理科が嫌いなのではなく、楽しみ方を知らないだけでした。
長くて短い3週間の最終日、生徒一人ひとりが書いた手紙をもらいました。
博士の手紙にはこう書いてありました。
「僕は理科が好きだけど、実習の先生が最初に来たとき、慣れないから少しイヤでした。でも、たくさん授業をしてくれて、みんなが楽しく理科の授業ができたので、最後はよかったと思います。本当の先生になって、また楽しい理科の授業をして下さい。」
後日談
大学の同級生が実習の数週間後、運動会?(忘れました)に遊びに行ってきたようでした。そこで私が担当したクラスの生徒からの伝言を教えてくれました。
「先生が授業してくれたところの理科のテスト、めっちゃできたよ!!」
実習は大変だったけど、行ってよかったな、と思いました。
小学校教育はどうなる
はっきり言って、小学校は「勉強」に関してはつまらなすぎると思います。
高校・大学で専門知識のある教授に教えてもらうようになって、よく分かりました。
私は先生たちというより、日本の教育制度に問題があると考えています。
そこの問題が解決しないから、私は先生という職業になろうとは思えませんでした。
小学校の先生にだって専門の教科はあって当然だし、全ての教科をきちんと教えられるようになるのは現実的に難しいことだと思います。
”1”のことを教えるためには”1000”のことを知っていないとできません。
小学校の勉強が簡単だからといって、教えるのが簡単なわけないんです。
深く、たくさんの知識がなければ、子どもの「なんで?」に答えることなんてできません。
こういう話になると「小学校は勉強だけを学ぶ場じゃない」という意見をよく聞きますし、言いたいことはよくわかります。
しかし、勉強が面白くないことを教える場であってもいけないのではないかと思います。つまらない勉強は苦しいし、覚えようなんて思えません。大人だってそうですよね。
だから、せめて3年生くらいからは、教科ごとに分けてほしいなと思うんです。
これは”厳しくするため”ということではなく、”楽しくするために”ということです。
後は子どもの好奇心が何とかしてくれます。
教科別にすると教員数が足りないというのなら、増やす方向に早く切り替えて欲しいし、教育にちゃんとお金使ってほしいな、と思います。